愛知県議会の「教育基本法の改正についての意見書」可決
に対する抗議声明
憲法と教育基本法の理念を実現する愛知の会
2006年4月21日
愛知県議会は3月24日の本会議で「教育基本法の改正についての意見書」を可決し、衆参両院議長及び内閣総理大臣並びに文部科学大臣に意見書を提出した。
同意見書では、「法制定後半世紀を経て、我が国の社会が大きく変化する中で、青少年の凶悪犯罪の増加、教育現場における学級崩壊やいじめの深刻化、家庭や地域社会における教育力の低下など、我が国の教育は多くの課題を抱えており、教育改革は国民的な課題となっている」とあたかも教育基本法が時代に沿わなくなり、規定に不備が生じているから様々な教育上の問題が生じているかのような認識を示し、「今こそ、青少年の健全育成の在り方や将来の日本を担う国際社会に通用する人材の育成をはじめとする教育課題並びに教育の地方分権に対して、国として積極的に取り組む必要がある」として、「国におかれては、新たな時代の教育の方向性を明確に示すため、国民的議論を踏まえた上で、教育基本法の改正に取り組まれるよう強く要望」している。
私たち、憲法と教育基本法の理念を実現する愛知の会では、今まで数多くの学習会、講演会を企画し、今日の教育問題の多くは、日本国憲法の平和と民主主義の実現という人類普遍の願いを教育によって実現しようとしている教育基本法の理念が実現されていないからこそ生じていることを確認してきた。教育基本法の前文では「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成」「普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育」を掲げ、第1条「教育の目的」では「人格の完成」を高々と掲げている。これらの内容は「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」13条や、子どもの権利条約の精神とも合致するものであり、国際的水準をいち早く満たしたものであり、21世紀においても光り輝いている内容である。
私たちは、県議会にも「教育基本法の改定ではなく、その理念の実現を求める意見書の採択を求める陳情書」を提出し、3月16日には文教委員会で口頭陳情まで行った。私たちの「意見書案」では、「いま、教育行政に求められていることは、教育基本法のめざす理念や内容が、戦後どこまで実現されてきたのか、実現できていない原因と実現のために必要な施策は何かなど、これまでの教育施策を総点検することです。政府の行うべきことは、教育基本法の改正ではなく、教育基本法の掲げる理念の実現に向けて最大限努力することだと考えます」と述べている。これは教育に関わるものが皆痛感していることである。
しかるに愛知県議会は県民に対する開かれた論議抜きで教育の憲法である教育基本法の改正を求める意見書を可決した。今、「改正」を求めることは、4月13日に発表された「与党教育基本法改正に関する協議会 教育基本法に盛り込むべき項目と内容について(最終報告)」で示された「公共の精神を尊び」「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する(態度を養う)」ことなどに示された国家主義教育の復活と教育における競争の激化を認めることにつながる。これらは決して認められる内容ではなく愛知県民の利益につながらないものである。私たちは意見書の可決に強く抗議する。
愛知県議会がまずなすべきことは愛知県において教育基本法の理念が実現されているかどうか今までの教育施策を総点検することであろう。校舎の耐震補強、高校統廃合、全国最低の高校進学率、全国的にも高いいじめの発生率、30人学級の進捗状況など教育行政の責任で改善すべき点は多い。
県民が求めていることは教育基本法の改正ではなく、子ども・青年が安心して学習することができる教育条件の整備である。
県議会の皆さんにおかれては直ちに意見書を取り下げ、県民の声に素直に耳を傾け、教育基本法の理念の実現のための施策を推進されるよう強く要望する。
憲法と教育基本法の理念を実現する愛知の会
共同代表 榊 達雄(名古屋大学名誉教授)
小林 武(愛知大学大学院教授)