2006年3月

教員評価制度調査研究会議委員 様

愛知県高等学校教職員組合
 執行委員長 藤原 章雄

「教員評価制度調査研究会議」まとめ(案)に対する見解

 日頃は、愛知県の教育の充実のためご尽力されていることに敬意を表します。また、日頃は私たちの活動にご理解を頂き感謝申し上げます。

 さて、第10回調査研究会議において、「まとめ(案)」(以下、「案」)が事務局より示されました。私たちは。この「案」には様々な問題があると考えています

 最大の問題は、現場教職員の意見や試行結果の反映が極めて不十分であることです。
 「案」では、「新たな教職員評価制度の導入が必要である」と明記されています。私たちは、「資質向上」や「学校の活性化」について極めて重要だと考えています。しかし給与処遇に結びつけることを前提とした本制度の導入は、学校現場に相互不信と混乱、管理職と一般教員の対立、評価結果に対する不満などにともなう意欲の低下を招き、学校全体の教育力の低下につながると考えます。

 今、求められているのは、子どもや保護者の意見・要望を受けとめた参加と共同の「開かれた学校づくり」だと考えます。そのために、生徒・保護者・教職員・校長によって構成される学校協議会を設置し、学校の教育課程を含め、様々な論議をすすめることの必要性を訴えてきました。そしてすでに実施されている「学校評議員」制度についても、生徒や管理職以外の教職員の参加と公開など、その改善を教育委員会に対し、求めてきました。

 また、学校内においても、自らの教育活動を開き、管理職を含めた同僚と自由で率直な意見交換をすすめ、相互に協力しあいながら、その改善をすすめていくことが必要であり、職場教研をはじめ、支部・全県そして全国で教研集会を開催し、教育活動の改善に向けた議論をすすめてきました。

 しかし、給与処遇に結びつけること前提に、管理職を評価者とする本制度の導入は、個々の教職員が自ら抱える問題を隠すなど、教職員の孤立化と閉鎖性を高め、こうしたとりくみを大きく阻害することにつながりかねません。また、先行実施された東京では、「早期退職を考えたことがある」と答える教職員が増加し、その数は8割を超えています。制度の導入を強行すれば、意欲の衰退と職場全体のメンタルヘルスが低下することは明らかであり、さらなる休職者の増加を招くことは必至だと考えます。

さらに「案」では、「教職員一人ひとりの能力や実績等が適正に評価され、評価が人事や給与等の処遇に結びつけられることが必要」とされています。

 しかし、県教委が実施した試行校アンケートにおいて、「評価の活用はすべきではない」が6割を超え、「給与に反映をすべきではない」は8割を超えています。また、試行校校長からも「成果主義以外の方法を」「共同で取り組む教育活動が多い学校では、教育力全体の低下が心配される」「給与への反映は先送りが得策である」との意見が出されています。
 今回の「案」は、こうした現場の声を全く無視するものです。

 県立学校においては、導入に反対する署名が、現場教職員の約8割にあたる7521人から寄せられています。試行校だけでなく、直接かつ最大の当事者である現場教職員の大多数が反対していることの重みを改めて受け止めて頂きたいと考えます。さらに、県立学校校長の8割が慎重ないしは反対の意見表明を行い、保護者アンケートでも、消極的な意見・反対意見が多数を占めています。

 委員の皆様方におかれては、こうした声を踏まえ、「案」について検討いただけることを切望するものです。
内容的にも様々問題があります。

第一に、勤務評定を「教育力の向上に十分に活かすことができない」とした上で、教職員評価制度を勤務評定に代わるものと位置づけています。査定昇給の導入が強行される中で、「案」では「処遇への反映を具体化する上でも・・『総合評価』が必要である」とし、総合評価を給与に連動する方針を一層明確にしています。そのことは、絶対評価か相対評価を検討課題としている点にも表れています。

 そしてそのことが、総合評価を「5段階」の評語で行うというこれまでの県教委の提案にも示されています。しかし、これは、教職員のランク付けにつながり、評価結果への不信と不満を決定的なものにします。その点、長野や名古屋が、評価において文章表記としている点に、私たちは注目しています。

 そうした姿勢を示す一方、当然とも言うべき、総合評価の開示や苦情への対処が不明確であることは、重大な問題です。
第二に、今後の課題として、「教職員評価制度」のための条件整備として、教頭の配置基準の改善や学校組織の見直しを検討課題としています。教育現場に求められているのは、「評価のため」ではなく、「教育のため」の条件整備です。「学校組織の見直し」については、一部の都府県で導入されている「主幹」など新たな管理職の導入が意図されています。集団でかつ子どもたちに直接向き合う教職員集団に、職階はなじみません。評価することを目的にしたこうした制度の導入は、教育力の改善にはつながるものではないと考えます。

第三に、評価者の負担について言及する一方、教職員の長時間過密労働の実態についての配慮がみられません。とりわけ来年度案において、私たちの再三の要求にも関わらず、そして文科省及び県教委自身「本務ではない」とし、その指導の大半が勤務時間終了後あるいは休日に行われている部活動が、「教員評価制度」の目標区分に上げられ、校長による評価対象とされていること断じて容認できないものです。

 私たちは、これまで10回の会議すべてを傍聴させて頂きました。そして、皆様方の真摯な議論に感銘し、次のような発言に心を動かされてきました。例えば、「数値目標を簡単にはできない。東大何人とか、不登校半減とかつまらん議論に流されてはならない。教員評価で、すべての先生を事細かに評価するのはどうか。今でも忙しいのに、さらに忙しくなるなら、学校はまわらなくなる」、保護者代表の方の「先生方は、昇給を望んで仕事をやっているのか。そうではないように思う。子どもと接していることがモチベーション。現場の気持ちはどうなのか」との問いかけに、中学校の校長先生は「子どもが変わったという喜びは、金では買えない。大きなモチベーション。純粋な気持ちでやっているのがほとんどだ。自分の足りない部分を他が補い、チームとしてやっている。個人としてやっている面は小さい。給料が関わるから、ということは考えたこともないのではなないか」と答えてみえました。まさに、そこには、教育現場に深く根ざした議論がなされていたと思います。

 私たち現場の教職員は、子どもたちに日頃、結果ではなく努力の過程の重要性を、競争や排除ではなく、助け合い支え合うことの大切さを訴えています。また経験的に、強制されたことではなく、自主的・自発的に行動したときにこそ、子どもたちが生き生きと大きく成長していくことを知っています。教育現場には、教育の条理が必要です。私たちは、教育の条理にもとづき行われる教育活動に対する評価は極めて重要だと考えます。

 しかし、現在検討されている「教員評価制度」は、教員を輪切りにし、給与において格差を付け、そのことをもって意欲を高めさせようとする、およそ、教育の条理にもとづいて行動すべき教育現場の人間にとって、二律背反を強いられるものとなっています。

 以上、「案」について、私たちの見解をまとめさせて頂きました。「案」について、意見を提出される上で、検討に加えて頂ければ幸いです。